続・高橋セミナー
第12回 層別因子を含む探索的な回帰分析入門 <第9章> 前後差の前値は常に共変量
2024年2月13日
要約
経時的に測定できる反応は,何らかの処置を行う直前にも測定することができる.処置の直前の測定値を前値としたときに,前値が実験の開始前に得られ,幾つかの群ごとに前値の平均と範囲が均一になるような群分けができる場合もある.前値による群分けができない場合,「平均への回帰」という厄介な現象への対応が必要となる.前値を含む経時データに対しては,前値からの前後差(変化量),あるいは,変化率に対する群間の比較が一般的に行われている.前後差に対して有意差検定をするまでもない明らかな平均値の差がある場合には,「平均への回帰」が結果に与える影響は相対的に小さい.だが,統計的に微妙な前後差となる場合に,「平均への回帰」による影響を無視できなくなる.本章では,前値と後値の関係に潜む「平均への回帰」が,群間の比較に際に対し,どのように影のような影響をおよぼしているか明らかにする.幸い,前値を共変量した場合の回帰分析を適用することにより,厄介な「平均への回帰」の影響を排除できることを示す.なお,第1.3節では,前値を共変量とする2群間比較について示し,第1.4節では,前値を共変量とする(対照群+2×2群,全体で5群)の解析事例を示した.
第9章 目 次
9. 前後差の前値は常に共変量 281
9.1. 「平均への回帰」 をめぐる葛藤 281
多様な揺らぎ
前後差での群間比較
癖のある共変量
9.2. 前後差Dに潜む「平均への回帰」の可視化 283
Excelによる正規乱数の発生
前値Xの揺らぎの可視化
個体内の揺らぎに起因する時点間の相関
前後差Dの分散のインフレ―ション
時点間の相関の期待値が ρ=0.3 の場合
9.3. 後値Yおよび前後差Dに対する群間比較 290
「平均への回帰」現象,
1)前後差D にのみ偶然に有意な差が出る場合
2)後値Y にのみ偶然に有意な差が出る場合
3)後値Y および前後差D共に有意な差が出る場合
9.4. 前値Xを共変量とした後値Yおよび前後差Dの解析 294
前値を共変量とする解析,
1)前後差Dにのみ偶然に有意な差が出る場合
共分散分析における最小2乗平均
最小2乗平均の95%信頼区間
2)後値Y にのみ偶然に有意な差が出る場合
交互作用を含む共分散分析
交互作用がある場合の最小2乗平均
3)後値Yおよび前後差D共に有意な差が出る場合
JMPによる主効果モデル
JMPによる交互作用モデル
中心化された場合の最小2乗平均
JMPの解析結果をExcelでグラフ化
交互作用を含める解析の妥当性
9.5. 前値Xと後値Yをめぐる各種の群間比較の第1種過誤(αエラー) 310
1:(X平均;A1 > X平均;A2) 場合のαエラー
2:(X平均;A1 >> X平均;A2);相関が大) 場合のαエラー
3:(X平均;A1 >> X平均;A2);相関が小) 場合のαエラー
4:(X平均;A1 ~ X平均;A2) 場合のαエラー
5:(X平均;A1 < X平均;A2) 場合のαエラー
SASによるシミュレーションによる第1種の過誤の検討
9.6. 前値X後値Yめぐる各種の群間比較の検出力(1-βエラー) 318
1: 前値Xが (X平均;A1 > X平均;A2) の場合の検出力
相関の期待値: ρ=0.90
相関の期待値: ρ=0.10,
2: 前値Xが(X平均;A1~X平均;A2)の場合の検出力
3: 前値Xが(X平均;A1<X平均;A2)と逆に大きい場合の検出力
相関の期待値:ρ=0.90
相関の期待値:ρ=0.10,
SASによるシミュレーションによる検出力(1‐β)の検討
文献索引, 索引, 解析用ファイル一覧 (327)
添付ファイル
高橋セミナー12_09_前後差の前値_2024_02_13.zip